AKB48 32ndシングル選抜総選挙 開票前夜

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私の見た、ぱるるとチーム4の総選挙

 「わたくし個人としてもチーム4としても、これからもっともっと上へ進んでいきたいと思います。」表情を変えずに淡々としたそれは、アンダーガールズに名を連ねた他のメンバーの半分にも満たないほど短いものであったが、これまでの彼女の決意、そしてこれからの彼女の可能性を感じさせるスピーチであった。

 時は遡り2010年、島崎遥香の初めての総選挙は、当時まだAKB48に加入して約半年の研究生であったのにもかかわらず研究生最高位の28位という結果でファンの間に驚きをもたらした。いや、研究生でありながら前田敦子らと共に雑誌グラビアで表紙を飾るなど選抜メンバー級の活躍ぶりから考えると、ある意味当然の結果であったのかもしれない。
 しかし、2011年の総選挙は速報でランクインせず、私自身、全票を島崎遥香に投じた上で奇跡を信じ開票当日の6月9日に日本武道館へ赴いた。3日前の6月6日、TDCホールにて行われていたリバイバル『僕の太陽』公演でAKB48の新チームとなる「チーム4」の結成が発表されたこともあり、島崎遥香のみならず他のチーム4メンバーの順位も気になるところであった。開演、冒頭のミニライブで『ヘビーローテーション』を歌い踊るチーム4と研究生のメンバー。皆一様に表情がこわばっている。40位から名前が呼ばれて結果発表が始まる。市川美織が40位、大場美奈が35位。島崎遥香は圏外であった。圏外メンバーへ投じた票はしばしば死票と言われるが、私はそうは思わなかったし、思いたくなかった。我々ファンは知る由も無いが、圏外メンバーの得票数はそのメンバーに明らかにされているかもしれないし、もしそうであるならば必ずしも死票とはいえない。とはいえ、いざ「圏外」という結果を目の当たりにすると自分の無力さを感じた。大島優子の「票数は、皆さんの愛です」という言葉に私自身も救われつつ、日本武道館を後にした。
 前年より13ランク以上順位を落とす結果で、島崎遥香2回目の総選挙は幕を閉じた。

 2011年8月8日、米子コンベンションセンター。この年のAKB48の全国ツアーは『AKBがいっぱい〜SUMMER TOUR 2011〜』と題し、チームごとに日本各地で公演を行った。そのチーム4公演の千秋楽である。チームA、チームK、チームBが4箇所ほどを回るところ、8月2日に行われた鹿児島市民文化ホールでの公演に続いて2会場目で早くも千秋楽、チケットの値段も先輩チームが4,800円であるのに対しチーム4は3,000円。それがこの時点でのチーム4の立場であり、現実であった。ここでは昼公演と夜公演の計2回が行われた。昼公演の会場内に入ると、どことなく言いようの無い安心感を感じる。ふと気付くと、同じ島崎遥香推しの知り合いに声をかけられた。周囲を見回すと、劇場や握手会で見たことのある方々がわんさか。ああ、これが安心感の正体か。遠い鳥取の地でもAKB48劇場のようだ。そして、東京から遠征したほとんどのファンが夜公演にも入場することとなった。
 夜公演も滞りなく進み、終盤にさしかかる。アンコールは「チーム4」コール。アンコール後のMCでは、島田晴香大場美奈がここ米子の地でチーム4単独公演を行えたことへの感謝を述べる。ここでまたチーム4コール。ずっと鳴り止まないチーム4コール。ぱるるは泣いていた。3ヶ月前、自分の生誕祭で泣く気配すら無かったぱるるが泣いている。ネ申TVの韓国海兵隊訓練でも泣かなかったぱるるが、泣いている。今まで、私はぱるるのことをあまり理解しないまま応援していたのかもしれない。「アイドルだって恋をする」し、ぱるるだって泣くのだ。しかも、自分のことではなく所属するチームのことで泣くのだ。ぱるるから感じた帰属意識。もらい泣きする要素としては十分であった。ぱるる、そしてチーム4を応援していこうと決めた。ぱるるが、チーム4が、好きだ。

 10月10日、AKB48劇場。チーム4としての初日公演である、『僕の太陽』公演が行われた。入場することは叶わなかったが、運良くその週末に行われた3回目の公演を観に行くことができた。そこには、センターポジションで躍動するぱるるの姿があった。今までの公演では比較的端の方で踊ることの多かったぱるるが、立ち位置ゼロで踊っている。リバイバル公演で観た印象とも違う、劇場でのセンターポジション。ぱるるに与えられたこの『僕の太陽』公演でのセンターポジション=前田敦子ポジションが、ぱるるがチーム4における何であるかを物語っていた。そして、悟った。ぱるるは、チーム4のセンターであり、エースなのだと。
 そして、チーム4の『僕の太陽』公演が始まってから、ぱるるは雑誌のインタビューなどで何度も同じことを話すようになった。「チーム4を知ってもらいたい」、「チーム4をアピールしていきたい」。どのインタビューを読んでも呪文のように唱えている、チーム4を、チーム4を。ぱるる自身、自分がチーム4のセンターとして、チーム4の代表として、自覚するようになったことの現れだろうか。

 2011年12月30日、『フライングゲット』が日本レコード大賞を受賞。ぱるるレコード大賞の発表の場に、チーム4メンバーとして唯一呼ばれた。これにより、私や周りのファンが何となくその時に気づいていたことがより一層現実味を増す。「ぱるるが推されている…!」
 「推される」こと、特に各種メディアに出演するという意味でのそれは、総選挙において大きな意味を持つ。9期生というぱるると同期で2010年に一足早く(チームKへ)昇格した横山由依は、その後、Not yetの結成・加入を経て雑誌グラビアへの掲載やテレビ番組への出演が多くなり、結果として2011年の総選挙では前年の圏外から19位へジャンプアップし選抜入り。指原莉乃AKB48メンバーとして初の単独看板番組を持つなどメディア露出が多くなり、2011年の総選挙では9位で選抜入り。このように、メディア露出の増加と総選挙での躍進は大いに関係しているものと思われる。
 年が明けても歌番組には必ずと言って良いほど呼ばれ、雑誌グラビアでは数名ではなく単独で掲載されるものも多くなった。そして、雑誌のインタビューでは極めつけのように「チーム4を知ってもらいたい」と語っている。ぱるるが推されはじめたという事実が、2012年の総選挙でのぱるるの躍進を期待させた。
 総選挙のシーズンになると毎年、ニッカンスポーツに総選挙に出馬する全メンバーの紹介記事が掲載される。ぱるるへのインタビュー分は5月5日号。そこでぱるるは次のように語った。
 「すごくプレッシャーを感じています。チーム4のみんなにも頑張ってほしいけど、私がチーム4で一番上にならないと…という気持ちもあります。そうじゃなきゃ、ダメというか。」
 そして、目標の順位として32位を挙げている。チーム4最高位で32位以上。これが今年のぱるるの、そして我々ぱるる推しの目標となった。

 2012年6月6日、日本武道館AKB48・27thシングル選抜総選挙開票日。速報では22位という、期待通り、むしろ期待以上の結果であった。言わずもがな、今年も誠心誠意込めてぱるるに全票投じた。今年は現地へ行くことは叶わず、自宅でGoogle+にて開票の様子を見守った。発表時、「チーム4」と読み上げられるたびに心臓が止まりそうになる。フューチャーガールズネクストガールズでは速報にランクインしていたチーム4メンバーや速報では圏外だったチーム4メンバーの名前が呼ばれる。そしてアンダーガールズの発表が半分過ぎたところで、「AKB48・チーム4、島崎遥香」と。23位。密かに期待していた前年の横山由依のような圏外からの選抜入りとはならなかったが、予想以上の順位だった。前年に選抜入りしたメンバーや、アンダーガールズのフロントだったメンバーを抑えての23位。これは誇っていい。ニッカンスポーツで語った「32位以上・チーム4として最上位」という目標も達成した。しかし、この結果を受けて、私自身そこまで嬉しくはなかった。何故だろう。他のチーム4メンバーの順位を振り返ると、永尾まりや:39位、田野優花:45位、山内鈴蘭:54位、前年にアンダーガールズ入りした大場美奈が57位、市川美織が58位。ぱるる以外は奮わなかった、と言ってもいい。ぱるるが「チーム4を知ってもらいたい」「チーム4をアピールしていきたい」と繰り返し言ってはきたが、「チーム4としては」思うような結果ではなかったと思う。そして、チーム4メンバーで最後に名前を呼ばれたぱるるの冒頭のスピーチへと繋がる。

 ちょうど一年前のこの日に産声をあげたチーム4というチーム。チーム4一周年という記念日に、ぱるるも23位。この先、「チーム4がもっともっと上へ進んで」いくためには、ぱるるの引き続きのアピールはもちろん、チーム4メンバー各々の活躍が必要だろう。そして、私自身もその姿をできるだけ見守っていきたいと思う。来年も選抜総選挙がもしあれば、そのときは共に笑って泣けるように。

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と、去年はこんな文章をBOMBに寄稿する形になった(http://ameblo.jp/bomblog/theme-10056913067.html)が、今年は去年ほど総選挙に対して関心を寄せているかと言われるとそうでもなかった。

去年は「チーム4のために」それなりの順位にランクインする必要があったし、ぱるる自身もそうなる必要があるといろいろなところで語っていたのでこちらとしてもそれなりに投票に向けての気持ちも盛り上がっていたが、今年は特に目指すところも伝わって来ず、立候補制ということもあって別に出馬しなくてもいいし(面白いし)、出馬したとしても圏外でいい(面白いし)。
そんなことを思っていたところで掲載されたニッカンのインタビューを読んでみると・・・

上位なら、かなり上位・・・7位より上がいい。そうじゃなければ、いっそのこと、圏外がいいです。

と。
笑ってしまった。
なんだ、結構同じことを考えているじゃないか。
インタビューは続く。

そのほうが、みんなが面白がってくれると思う。中途半端な順位は嫌です。だって驚きもないし、つまらないじゃないですか。

去年はチーム4をアピールするために頑張ったが、今年は何のために頑張るのか伝わってこない。
去年は彼女とチーム4のことを思って投票したが、今年は何のために投票すればいいのかわからない。

記事を読むまではそんなことを考えていたが、記事からはマイペースないつもの島崎節よろしく、意外なほど総選挙を楽しんでいることが伝わってきて、じゃあ、こちらも楽しもうかな、と。
楽しむためには自分でお金を出して投票しようかな、と。

そんな思いで今年も投票させていただいた。

去年はチーム4と彼女のために、今年は彼女が「中途半端な順位で終わらない」ために。

というのは表向きで、本心は何位でもいい。
何位でも「ぱるるらしく」、順位を受け止めて楽しんでくれたらいいなあと思う。

開票まで、あと0日。